5月のグローバル市場の主軸は極めて明確だった。中東局勢の段階的な緩和と、AIハードウェア需要の大爆発だ。
主な動向:
- AIハードが米国株を牽引: デルが決算発表後に1日としては過去最大となる約33%の暴騰を記録し、年初来の上昇率は230%を超えた。これに刺激され、サムスン、マイクロン、SKハイニックスが同じ週に相次いで時価総額1兆ドルの大台を突破。ダウ平均は月末に史上初めて51,000ドルの高値で取引を終えた。
- 原油価格が急落: 米イラン間でホルムズ海峡の通航に関する60日間の覚書(MOU)枠組みが合意に達した。トランプ氏の正式署名はまだなく、イラン側も「未確定」としているが、市場は停戦への期待を先行して織り込んだ。ブレント原油は月間で19%超下落し、2020年3月以来の大幅な下落率となった。
- 日元は過去最大の介入: 財務省は、4月28日から5月27日までの期間に、過去最大規模となる11.73兆円(約736億ドル)の円買い介入を実施したことを発表した。
- 安全資産の明暗: 米国債は衝突勃発以来の好パフォーマンスを記録し、10年債利回りは月内高水準から4.45%付近まで低下。金現物は4500ドルの高値を維持したものの、高金利長期化への警戒感から月間では約0.8%の小幅安となった。
- 暗号資産に冷や水: 米財務省は、イランが保有する約10億ドル相当の暗号資産を押収したと発表した。
今後の見通し: 地政学リスクの後退は市場のリスクオン姿勢を呼び戻したが、インフレへの警戒は解けていない。米国の4月コアPCEデフレーターは前年比3.3%(総合PCEは3.8%)と、FRBの目標である2%を大きく上回っている。また、停戦合意はまだ最終決定ではなく、ホルムズ海峡の完全な正常化には不透明感が残るため、サプライチェーンへの圧力は燻り続けている。
結論: 戦争プレミアムは剥落しつつあるが、インフレは依然として粘着質だ。データが本格的に減速を示さない限り、主要中央銀行が利下げに踏み切る可能性は低い。