不安の錬金術

TECHNOLOGY • MACRO

不安の錬金術

2026-05-0811分で読める

不安の錬金術

最近、世の中はAIデモに夢中だ。

ChatGPT。
AIエージェント。
画像生成。
「世界を変える」と叫ぶスタートアップ。

でも正直、実際に金が流れている場所を見ると、これはもうソフトウェア革命なんかじゃない。

完全に土木工事だ。

しかも、かなりデカいやつ。

今、本当に儲かっているのは、カフェでプロンプトを語っている人たちじゃない。

発電所の近くにデータセンターを建てている人間だ。

変圧器を奪い合い、電力を確保し、GPUを軍需物資みたいに取り合っている。

そこが、多くの人がまだ理解していない部分だと思う。

AIはもう、シリコンバレーの「コードを書く世界」じゃなくなりつつある。

むしろ冷戦時代のインフラ競争に近い。

しかも怖いのは、まだ全然ピーク感がないことだ。


今の空気感は、2020年のトイレットペーパー買い占め騒動にかなり似ている。

ただ、今パニック買いしているのは個人じゃない。

巨大テック企業だ。

Metaは何百億ドル単位でAIに突っ込んでいる。

Microsoftも止まらない。

Amazonも完全に焦っている。

Googleですら、「王座を守らなきゃいけない側」の顔になり始めている。

誰も「次のプラットフォーム転換」に乗り遅れたくない。

そして市場で恐怖が支配し始めると、だいたい規律は消える。

その瞬間から、資本サイクルは理性では動かなくなる。

ウォール街は相変わらず綺麗なスライドで説明したがる。

「AIによる生産性向上」

「長期成長」

「デジタルトランスフォーメーション」

いや、そんな綺麗な話じゃない。

かなりの部分が、単純に「置いていかれる恐怖」だ。

正直、10年後のAI経済なんて、誰にも分かっていない。

でも一つだけ分かっている。

競合にインフラを先に押さえられたら、二度と追いつけない可能性がある。

だから全員が金を燃やし続けている。

完全に焼け石に水状態だ。


みんなJensen Huangを「武器商人」って呼ぶ。

でも個人的には、あれはちょっと違うと思う。

むしろ「家賃を徴収する大家」に近い。

NVIDIAはAI経済の真ん中に料金所を作った。

そして世界中の企業が、そこを通るしかなくなった。

本当に恐ろしいのはGPUそのものじゃない。

CUDAだ。

あれが完全に逃げ道を塞いでいる。

面白いのは、AIの未来を熱く語るCEOたちが、結局は利益の大半をNVIDIAに送金していることだ。

みんなAIのために働いている。

でも老黄だけが「場所代」を回収している。

しかも市場は、まだNVIDIAの支配力を軽く見ている気がする。

半導体業界を知らない人ほど、「そのうち競合が追いつく」と簡単に言う。

そんな甘くない。

この業界は地獄みたいに難しい。

歩留まり。
発熱。
先端パッケージ。
供給制約。
ネットワーク遅延。

小さなミスで数十億ドル吹き飛ぶ世界だ。

だからSNSで「すぐ追いつく」と語っている人を見ると、ちょっと笑ってしまう。

現実世界は、Twitterよりずっと遅い。


TSMC周辺はもっと異常だ。

今の台湾は、ただの半導体拠点じゃない。

世界経済そのものの「命綱」に近い。

しかも、各国政府もそれを理解し始めている。

数年前まで、一般人はEUV露光装置なんて気にしていなかった。

でも今は政治家まで半導体を語る。

まるで1970年代の石油みたいに。

なぜか。

世界が気づいてしまったからだ。

現代文明って、思った以上に脆い。

先端半導体を止めれば、

クラウドも止まる。
AIも止まる。
軍事も止まる。
自動化も止まる。

全部つながっている。

半導体は単なる産業じゃない。

もはや空気みたいな存在になり始めている。

そして国家が「これは戦略物資だ」と認識した瞬間、市場は普通じゃなくなる。

そこから本当の歪みが始まる。


あと最近、かなり市場が酔い始めている感じもする。

AI企業だらけだ。

どこを見ても「AI搭載」。

どのVC資料も、光るニューラルネットワーク画像ばかり。

正直、かなり怪しい会社も増えてきた。

でもバブルってそういうものだ。

危険なのは、バブルが「本物」の上に形成されることだ。

鉄道もそうだった。

インターネットもそうだった。

スマホもそうだった。

AIも、おそらく同じになる。

だから余計に厄介なんだ。

長期では正しくても、途中で大量の人間が吹き飛ぶ。

それが市場だ。

私も何度も見てきた。

最初はみんな疑う。

次に価格が上がる。

そのうち全員が天才になった気になる。

レバレッジが増える。

規律が消える。

最後には、誰もバリュエーションを気にしなくなる。

まだ完全にはそこまで行っていない。

でも、かなり近づいている感じはする。

最近のサンフランシスコの空気なんて、少しドットコムバブル末期に似ている。

誰もがAI起業家。

誰もが革命家。

誰もが「指数関数的成長」を信じている。

だいたい、こういう時は誰かが死ぬ。

問題は、それが誰か分からないことだ。


そして、ほとんど誰もまだ真剣に語っていないのが「電力」だ。

AIは半導体だけを食っているわけじゃない。

電気を食っている。

しかも異常な量だ。

いずれGPU不足より先に、電力不足が問題になる可能性すらある。

だから最近、データセンターが戦略インフラみたいな扱いになり始めている。

原子力が再評価されているのも、その流れだ。

送電網も重要になってきた。

人々はまだAIを「コードの世界」だと思っている。

でも実際は違う。

コンクリート。
冷却設備。
変電所。
送電線。

AIはどんどん「重い産業」になっている。

そして重工業ブームは、だいたい途中からかなり荒れる。

特に国家、安全保障、地政学が絡み始めると、一気に危険になる。


個人的に一番イライラするのは、多くの個人投資家がまだノイズばかり見ていることだ。

FRB発言。

Xの喧嘩。

日足チャート。

誰かの100万ドルBTC予想。

みんなスコアボードばかり見て、スタジアムの下で動いている巨大な機械を見ていない。

本当の流れはもっと深い。

今、世界は巨大な「焼き金サイクル」に入っている。

AI。

半導体。

電力。

国家主導のインフラ投資。

軍事寄りテクノロジー。

巨大資本。

全部つながり始めている。

そして政府が本気で参加し始めたサイクルは、普通の人が思うより遥かに長く続く。

そこが怖い。

巨大インフラバブルは、だいたい静かには終わらない。

特に国家のプライドと覇権争いが混ざり始めると、相場は一気に危険になる。

そして、ものすごく中毒性を持ち始める。

ニュースレター

ジャーナルを購読する

市場、テクノロジー、流動性に関する週刊インサイト。お好みのプラットフォームで更新を受け取ります。